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いとはんの半纏


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母の兄嫁にあたる叔母が天に召されてから、
約1ヶ月。
繰り上げの49日の法要が先日行われた。
姐さん女房だったから、享年84歳。
1年前、突然意識を失ったまま 目を覚ますことなく そのまま安らかに息をひきとった。

形見分けに・・・と 母がもらいウケてきたたくさんの着物の中から、私は大島紬の半纏を一枚もらう。
ショウノウの匂いが強く残るその半纏に袖を通して、姿を鏡に映してみる。
「うん・・まんざらでもないな・・・」などと、角度を変えて丹念に立ち姿を観察しながら、
ふと・・以前深夜映画で観た「楢山節考」のある場面を思い出して我にかえった。








自分たちが生きるため、その村ではある年齢に達した年寄りを姨捨山に送る・・という掟があり、まだ元気な年老いた母をその息子が負ぶって山深くに捨てに行く・・という話。
断腸の思いで家に帰り着いた息子の目に飛び込んできたのは、自分の妻が 昨日まで母が締めていた帯を身につけて 何事もなかったように家事をする後ろ姿だった・・・という一場面。

「なんだかなぁ・・・」と複雑な溜息をひとつ。

何度もこの日記でも登場していると思うが、叔母は大きな網元のお嬢さんだった。
彼女が「いとはん」と呼ばれていた娘時代の着物は、大正ロマンの香り漂う上等なものばかりで、見ているだけで溜息が出る。
何年か前に、その一部を譲り受け、 胡桃の椅子の作品にも使わせてもらったりもした。
そんな叔母が晩年に仕立て直したのだろう・・・。
上等の大島の半纏は 小柄な叔母の体に合わせて、気持ち袖が短め。

大事に着させてもらいます・・・。

ものにも確実に記憶がある・・・
そんな思いを巡らせる 少し物寂しい 秋の日の午後。

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by 4seasons-kurumi | 2006-10-26 16:03 | 子供の頃
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